PROJECT STORY / 配送カウンターアプリプロジェクト

付帯作業や待機時間をアプリで可視化し、
ドライバーの労働環境を改善する。

INTRODUCTION / プロジェクト概要

ドライバーの仕事は荷物を目的地に運ぶことだ。しかし、実際の業務は「運送」だけにとどまらない。届け先の倉庫内で指定の保管場所に荷物を格納する「棚入れ」や荷物をバラして納品する「バンド切り」、ときには倉庫内で商品を移動させる「フォークリフト作業」など、さまざまな付帯作業が発生している。
配送カウンターアプリは、ドライバーが配送する際の待機時間や付帯作業の実態把握を目的として開発されたKRSのオリジナルアプリだ。そのほかにもGPS動態管理による電話連絡の工数削減や車両運行状況の把握といった機能を併せ持つ。
このアプリを使用することにより、KRSはリアルタイムで配送状況を確認するとともに、ドライバーがどれだけの付帯作業を行い、待機に時間を要しているかを正確に把握することができる。しかし、真の狙いはドライバーの作業実態の把握ではない。把握したデータをもとに、ドライバーの労働環境を改善することこそが目指すゴールなのだ。

PROJECT MEMBER

  • 渡邊 雄一 WATANABE YUICHI
    広域営業本部 広域営業部
    1996年入社
  • 本間 彩香 HONMA AYAKA
    共同物流事業 業務企画チーム
    2018年入社
  • 西森 文香 NISHIMORI FUMIKA
    広域営業本部 流通営業部
    2020年入社
STORY/01

プロジェクト発足の経緯と、
プロジェクトにおけるそれぞれの役割を教えてください。

  • 渡邊

    大型車両のドライバー不足は物流業界共通の問題です。2016年の軽井沢でのスキーバス事故などを契機に、大型車両ドライバーの過酷な労働環境が社会問題になりました。物流業界もまた同じ課題を抱えています。その過酷な労働環境の原因の一端が、納品先での付帯作業と待機時間と考えられています。配送カウンターアプリはそのドライバーの労働実態を正確に把握することを目的に開発しました。

  • 本間

    アプリの仕組みは簡単です。ドライバーが作業開始時にスマホのアプリを起動するとGPSで車両を追跡します。各納品先では付帯作業を終えるごとにどれくらいの時間を要したかをドライバーが入力。それだけで待機時間や付帯作業の実態がリアルタイムで送信されます。これまでは作業終了時に紙で報告書を作成してもらっていたものを、アプリによってより簡便、かつ正確な報告が可能になりました。

  • 渡邊

    こうしたドライバーの業務実態を正確に把握することで、労働環境の改善を進めることが本プロジェクトの狙いです。待機時間や付帯作業は納品先の要望に応じて発生するため、労働環境の改善にはお客さまを通じて納品先に業務改善の協力をお願いする必要があります。その際に、根拠となるデータがなくては説得力に欠けてしまい、紙の報告書では集計・分析も困難です。そうした経緯から、2017年にアプリ開発はスタートしました。私はプロジェクトリーダーとしてアプリ開発、導入業務、成果物を用いた営業交渉の準備の各工程に携わりました

  • 本間

    私はちょうどアプリが完成した2018年に入社しました。ドライバーへのアプリ配布、使用方法の説明など、アプリの普及に奔走しました。ドライバーは高齢の方も多く、初めてスマホを利用する方や、新しい作業を行うことにとまどう方もいて、慣れてもらうまでに充分に時間をかけて説明しました。

  • 西森

    私は配送カウンターの実績データをもとに、改善交渉に用いる各種資料を作成しています。また、営業所からのエラーに関する問い合わせ、新規の営業所にアプリを導入する際のセットアップ業務にも対応しています。配送カウンターアプリは現在も改良を続けており、専任スタッフとしてシステム会社との打ち合わせにも参加しています。

STORY/02

プロジェクトを遂行するにあたって
どのような苦労がありましたか。

  • 渡邊

    アプリ開発は動態管理ソフトを保有するシステムベンダーと共同で進めました。先にも述べたように、最終的な狙いは労働環境改善交渉に用いるデータを収集することだったため、営業部門からはこんなデータが欲しい、あれも欲しいとさまざまな要求が出されました。しかし入力項目が増えるとドライバーの負担は増加します。その負担を軽減するために入力項目を厳選し、操作を簡素化するなど様々な工夫を凝らしました。それでも最初は「新しい付帯作業が増えただけじゃないか」と反発する方も多く、導入当初は理解を得ることに苦労しました。

  • 本間

    最初はみなさんスマホに抵抗があったようですね。初めてスマホを使うドライバーがほとんどでしたので、電源の入れ方や指の動かし方など、本当に初歩の初歩から説明しました。マニュアルも用意して配布したのですが、それでもわかりにくいという声もあって、西森さんにはマニュアルの改訂をお願いしました。

  • 西森

    そうでしたね。とくにアプリのアップデートをどう行うかをわかりやすく説明するのが難しかったです。細かい部分ですが、配布するマニュアルの字を大きくしたり、フルカラー印刷にしてみたり。最近では動画マニュアルも作成しました。という私も動画編集ソフトを扱うのは初めての経験で、最初は情報を詰めこみ過ぎて、説明が速すぎてわからないといった失敗を繰り返しました。

  • 渡邊

    スマホのセットアップも大変だったでしょう。

  • 本間

    はい。最初は川崎営業所で80台、次に東京営業所で150台と、試験導入から次々と増やしていったのですが、現在は全部で1,700台ほどのスマホが使用されています。その1台1台にアカウントを設定し、アプリをダウンロードし、管理用のシールを貼っていくのですが、とても営業企画部だけでは手が足りず、他部署からも応援していただき、人海戦術で進めました。セットアップがスムーズに進められるように下準備を行い、効率的に作業を割り振りするなど管理面が大変でしたが、回数を重ねていくことで効率的に運用できるようになりました。

STORY/03

このプロジェクトを通して、
もっとも印象深かったことは。

  • 西森

    アプリは2019年から全国導入を進め、2020年から本格的なデータ収集が始まっています。私は現在そのデータ管理を任されています。労働環境の改善交渉に用いられるものなのでデータの精度には注意を払っています。最近は動態管理が行えることでお客さまへのレスポンスが向上したという声や、改善交渉により納品先での附帯作業がなくなった、待機時間が緩和されたという声もドライバーから聞きます。やはりそうした現場の方々の声に接し、自分の仕事が労働環境の改善に貢献できたと実感できたときが一番の喜びですね。

  • 本間

    アプリの導入時は、ドライバーに使用方法を説明するために北海道から九州まで、日本全国を巡りました。新たな作業をお願いすることになるので、最初は顔をしかめられたりもするのですが、このアプリが業務改善につながることを丁寧に説明すると、みなさん協力的になってくださいます。仲良くなって地域の美味しい店の情報を教えていただくこともありました。そんな小さな触れ合いの数々がとても印象に残っています。また2019年に、現場の意見を広くお聞きするために全国の営業所から60名が参加するテレビ会議を開いたことも思い出深いです。「入力を間違えたときの戻るボタンが欲しい」といった現場ならではの意見も聞くことができました。

  • 渡邊

    本プロジェクトのゴールは、ドライバーの作業実態をデータ化・可視化し、それをもとに納品先と交渉を行い、労働環境の改善を実現することにあります。その意味で、まだまだこのプロジェクトは道半ばです。今後は営業部門と連携して、納品先ごとに作業実態とその改善策をまとめたカルテをつくり、改善交渉を成功に導いていく必要があります。プロジェクトを振り返るのは、それからだと考えています。

STORY/04

今後のプロジェクトについて、
課題や目標があれば教えてください。

  • 西森

    配送カウンターアプリは営業部門や配送現場からのご要望を受けて、操作性の向上など、今も進化を続けています。また日々各種データが蓄積されており、これらは配送現場を可視化する貴重なビッグデータになります。ドライバーの労働環境改善という社会的課題の改善を担っているという自覚をもって、これからも日々の業務に向き合いたいと思います

  • 本間

    私はプロジェクトに関する業務を西森さんに引き継ぎ、現在はプロジェクトの一線から離れておりますが、プロジェクトの軌跡をたどった一人として、これからもサポートを続けていきたいと思っています。

  • 渡邊

    2019年に施行された働き方改革関連法で、時間外労働時間は原則月45時間、年360時間と上限規制が定められました。猶予期間が設けられた車両運転業務についても2024年に適用がスタートします。ドライバーの労働環境改善は、物流業界にとって努力義務ではなく、法令順守の問題であり喫緊の課題です。食品流通のリーディングカンパニーとして、KRSはこの問題に取り組む責務がある。本プロジェクトはそうした強い意志を持ってスタートしました。配送カウンターアプリによって可視化されたデータをもとに、300に及ぶ重点解決先をピックアップし、これまで60件以上の環境改善を実現してきました。もとより労働環境改善はKRS単独で解決できる問題ではなく、物流業界や食品メーカー、問屋など幅広い関係者に働きかけ、連携も進めています。課題は山積し、ゴールまでの道のりはまだ遠い。しかし、必ず目標にたどり着かなくてはいけない。このプロジェクトは物流業界を改革するものだと信じています。

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